LOGIN私が慌てていると、真人さんが楽しそうに笑う。
「陽奈ちゃん、また三人で寝たいの?」「うん!」
「そっか」
そして、私を見た。「葵さんは?」
「え?」
「今日も一緒に寝る?」
「…………っ!!」
な、なんで私に聞くの!?陽奈が期待に満ちた目で見つめてくる。真人さんまで、優しく微笑んでいる。
……もう逃げ道がない。
「……陽奈が、そうしたいなら」小さな声で答えた。
すると、真人さんが嬉しそうに笑った。「じゃあ、決まりだね」
「やったぁ
「……神田君」「ん?」「昨日、花菱さんと話してた?」「花菱さん?」 神田君が少し考える。「ああ、話したけど」「……何の話?」「え? どうしてそんなこと聞くの?」「あ、いや! 仕事のことかなって」 慌てて付け足した。 神田君は不思議そうな顔をしたあと、笑った。「仕事の話もしたけど、ほとんど雑談かな」「……雑談?」「そうなんだ。花菱さん、最近ちょっと変わったものにハマってるみたいで」「変わったもの?」「なんか、かわいいものが好きらしくて」 ……もしかして、もかちゃんのことかな。「そうなんだ……」「意外だよね。人って見かけによらないもんだって思ったよ」 神田君が笑った。 昨日、雑談したんだ……。神田君はどこまで聞いたんだろう。聞きたいけど、これ以上聞いたら変に思われる。ただでさえ挙動不審な感じなのに。「神田君はかわいいもの好きなの?」「えっ、好きだけどなんで?」 あまりにはっきり言われて驚いた。「かわいいって正義だと思わない?」「あ、うん。まあ」「子供なんて特にかわいいよね。純粋無垢な所とかすごくいいなって思うし」「あ、そ、そうだよね。私も、子供好きだから」「気が合うね」「えっ」 だめだ。「気が合うね」って言われて神田君にじっと見られ、なんだか怖くなってしまった。 彼がストーカーとはとても思えないのに、どうしてだろう。 犯人から届く恐ろしいメッセージが、どうしても私の心を闇に引きずり込んでいく。 
でも、社長(まさとさん)と一緒に出勤するなんて、絶対に目立つ!「……真人さん、もしかして楽しんでません?」「少しだけ」「もうっ!」 真人さんが声を上げて笑った。「でも、葵さん。僕たちが付き合っていることは、隠す必要がないんだよ」「それはそうですけど……」「それに、僕の恋人だと周囲に知ってもらった方が、変な虫も寄ってこないだろう?」「……虫?」「うん。葵さんに近づく悪い虫」 ……え? それって、ストーカーのこと?「それとも、僕以外に近づいてほしい男性がいる?」「い、いません!」 思わず即答してしまった。すると、真人さんが嬉しそうに笑う。「そっか。よかった」「……っ!」 もう! どうして、そんな顔をするの!? まるで、本当に私のことが好きみたいじゃない――って、そんなわけないから!! 真人さんは、私のことをどう思っているんだろう。 最近、距離が近すぎて、どこまでが偽装なのかわからなくなってきた。 私は窓の外へ視線を向けた。 このままだと、彼を好きになってしまいそうで怖い。らどうしよう。 そんな不安を抱えているうちに、車は会社へ到着した。「おはようございます」 真人さんと並んでエントランスに入る。すると、受付の女性が目を丸くした。「お、おはようございます! 社長!」「おはよう」 真人さんはいつもどおり、爽やかな笑顔で挨拶する。 その隣で、私は小さく頭を下げた。「お、おはようございます……」 ううっ。視線が痛い!
「ママ!」「なあに?」「きょうも、しゃちょーさんとねんねする?」「えっ!?」 今日も!? 私が慌てていると、真人さんが楽しそうに笑う。「陽奈ちゃん、また三人で寝たいの?」「うん!」「そっか」 そして、私を見た。「葵さんは?」「え?」「今日も一緒に寝る?」「…………っ!!」 な、なんで私に聞くの!? 陽奈が期待に満ちた目で見つめてくる。真人さんまで、優しく微笑んでいる。 ……もう逃げ道がない。「……陽奈が、そうしたいなら」 小さな声で答えた。 すると、真人さんが嬉しそうに笑った。「じゃあ、決まりだね」「やったぁ!」 陽奈が飛び跳ねる。 もう私、どうなっちゃうんだろう。 このままじゃ、本当に真人さんから離れられなくなっちゃう。 そんなことを考えていると、真人さんが私の耳元で囁いた。「葵さん」「……はい?」「僕も、楽しみにしてる」「……っ!!」 ちょ、ちょっと!! そんなこと、耳元で言わないでよ!! 心臓が、壊れちゃう!! 私の反応を見て、真人さんが楽しそうに笑った。 もう! この人、絶対にわかってて言ってる! でも、私も、少しだけ楽しみだなんて……絶対に言えない! ※ 朝食を終え、陽奈を保育園へ送ったあと、真人さんと一緒に会社へ向かった。 車の中で、
「……ママぁ」 頬をつんつんと突かれた。「ん……?」「ママ、おきてぇ」「……陽奈?」 ゆっくり目を開ける。 カーテンの隙間から、朝の光が差し込んでいた。 もう朝なんだ。 あれから、ぐっすり眠れたみたい。「ママ、おはよ!」「おはよう、陽奈」 私は身体を起こそうとして……「……あれ?」 動けない。どうして? 腰のあたりに、何かが……。 そっと視線を下ろすと、大きな腕。 ……腕? えっ!? 慌てて振り返ると、すぐ後ろに真人さんの寝顔があった。「…………っ!!」 ち、近い!! 近すぎる!! そうだった。昨夜、三人でくっついて寝たんだった! でも、まさか朝までこのままだったなんて! 真人さんの腕が、私と陽奈を包み込むように回されている。 私はすっかり、真人さんの胸に背中を預けていた。 しかも私の手が、真人さんの服をぎゅっと握っている。 ……え? ちょっと待って。 これ、私が離さなかったってこと!?「ママ?」 陽奈が不思議そうに首を傾げる。「おかお、あかいよ?」「えっ!?」「おねつ?」「ち、違うよ!」「じゃあ、どうしたの?」「な、なんでもない!」 慌てて真人さんの服から手を離
「はあっ……はあっ……!」 心臓が激しく鳴っている。 怖い。 怖い、怖い! まだ、肩を掴まれた感触が残っている気がする。 ぼろぼろと涙がこぼれる。ぎゅっと自分自身の体を抱きしめた。「葵さん!」 すぐ隣から声がした。「……っ!?」 びくっと身体が跳ねる。「葵さん、僕だよ。真人だよ」「ま、真人……さん……?」
「陽奈ちゃんを守るのは、葵さんだけの役目じゃない」 真人さんが私を見つめる。「僕にも、守らせてほしい」「……真人さん」「葵さんも、陽奈ちゃんも。二人とも大切だから」 その言葉に、胸がいっぱいになった。 大切――真人さんにとって、私たちは大切な存在なんだ。「どうして、そこまでしてくれるんですか?」 ずっと聞きたかった。 最初は、私たちを助けてくれただけだった。それなのに、家に住まわせてくれて、陽奈のことも、まるで自分の娘みたいに可愛がってくれて。「……私たち、偽装家族なのに」 そう言った瞬間、胸がちくりと痛んだ。 自分で言っておきながら、嫌な言葉。 偽装家族。 そうだよね。 私たちは、本当の家族じゃない。真人さんが優しくしてくれるのも、きっと責任感が強いから。 「……葵さん」 真人さんが、少しだけ真剣な顔になった。「僕はね、偽装だから二人を大切にしているわけじゃないよ」「……え?」「最初は、確かに守ってあげたいと思った。それだけだったけど、一緒に過ごしているうちに、気持ちが変わったんだ」 その言葉に心臓が跳ねた。「……気持ち?」「うん」 真人さんが微笑む。「家に帰ったら、葵さんと陽奈ちゃんがいる。それが、すごく嬉しい」 淋しい家に一人で帰る孤独……それはわかる気がする。 誰かが一緒にいてくれるだけで、自分のことを「お帰り」って出迎えてくれるだけで、その日いちにちが幸せになることを、私は知っている。「陽奈ちゃんが『しゃちょーさん』って駆け寄ってくれるのも、葵さんがご飯を作ってくれるのも、







